2024年には、世界全体で149ゼタバイト(ZB)のデータが生成されました。予測では、この数値は2028年までに394ZBに達します。2025年ですでに、世界で生成されるデータ量は1日あたり0.4ZB、つまり402.74GBとなる見込みです。 

このように指数関数的にデータが増加していく時代では、各組織は効果的なデータ保護戦略を導入する必要性に直面しています。これは必須事項です。ガートナーによると、2028年までに75%の企業が、データの保存先をオンプレミスとクラウドの両方にしてバックアップと復旧を実行するタイプのデータソリューションを採用すると予測されています。この割合は、2024年の20%から大きく増加しています。

バックアップ手法にはさまざまなものが存在しますが、中でも増分バックアップは、ハードウェア障害、サイバー攻撃、悪意のある内部関係者、自然災害などによる業務中断に対して、効率性と包括的なデータ保護の両立のバランスが良い強力な手法として注目されています。本ガイドでは、増分バックアップの基本、バックアップの種類、増分バックアップの手法について解説します。また、この技術を活用してデータ保護の取り組みを始める際のベストプラクティスも紹介します。

増分バックアップについて理解する

一般的にフル(完全)バックアップとも呼ばれる従来のデータバックアップは、前回のバックアップ以降の変更の有無にかかわらず、システムやデータセット内のすべてのデータをコピーします。

これに対して、差分バックアップは、前回のフルバックアップ以降に変更されたデータのみをコピーし、継続的にすべての変更を蓄積していきます。

フルバックアップの場合、より多くのストレージ容量と時間を要しますが、復元にはフルバックアップデータのみが必要となるため復元処理がシンプルに済みます。一方、差分バックアップの場合、必要なストレージ容量が少なく、バックアップ処理が高速ですが、復元にはフルバックアップデータと最新の差分バックアップデータの両方が必要です。

これら以外の選択肢として、 増分バックアップも検討に値するバックアップ方式です。

増分バックアップとは、前回のバックアップ以降に作成または変更されたデータのみをコピーすることに重点を置いたデータ保護手法です。従来のフル(完全)バックアップが変更の有無にかかわらずすべてのデータを無差別にコピーするのに対し、増分バックアップは対象を絞っているため効率的です。この方式では、増分の変更のみを取り込むことで、ストレージ利用量を最適化し、バックアップ処理に要する時間を短縮します。

初回のフルバックアップが増分バックアップの開始時点となります。以降のバックアップは増分方式で実行され、前回のバックアップ以降に追加・変更・削除されたデータのみが取り込まれます。これにより、各バックアップが前回のバックアップを基盤として積み重なっていく増分バックアップチェーンが形成されます。これらの増分バックアップを初回のフルバックアップと組み合わせることで、各時点におけるデータの完全な状態を再現することができます。

増分バックアップと従来型バックアップの利点の比較

増分バックアップは、前回のバックアップ以降に変更されたデータのみを取り込むことで、従来のフルバックアップ方式に比べて大きな利点を提供します。さらに、この合理化された方式では、増え続けるデータ量を管理するための費用対効果の高い拡張性が実現できます。増分バックアップの採用を検討する際には、これらの利点を考慮してください。

ストレージ利用量の最適化:変更されたデータのみを対象とすることで、増分バックアップではフルバックアップと比べて必要なストレージ容量が大幅に削減されます。このような効率性の高さから、ストレージリソースを圧迫せずに、より頻繁なバックアップが可能になります。さらに、バックアップ処理が高速に実行できるため、システムのダウンタイムが最小化され、データ量が増え続けてもデータ保護の強化が図れます。

バックアップ処理の高速化:変更されたデータだけがコピーされるため、バックアップ時間が短縮され、本番システムへの影響が最小化されます。より頻繁なバックアップが可能になるだけでなく、業務中断を最小限に抑えつつより優れたデータ保護が実現できます。増分バックアップではリソースの利用が最適化されることから、大規模または動的なデータセットの管理に理想的な選択肢です。

ネットワーク帯域幅の消費量の削減:増分バックアップは、ネットワーク経由で転送されるデータ量を最小化し、ネットワークリソースへの負荷を軽減します。このような効率性の高さから、帯域幅が限られた環境でもシームレスな運用が可能です。さらに、データ転送を高速化し、分散システム全体のバックアップのパフォーマンスが向上します。

バックアップ頻度の向上:増分バックアップは効率性が高く、より頻繁にバックアップを実行できるため、より粒度の高いデータ保護が可能になります。このバックアップ手法は、最近の変更を一貫して取り込むことでデータ損失を最小限に抑えます。また、復旧のスピードが迅速なため、最新のデータで業務をすぐに再開できます。

増分バックアップの仕組み

増分バックアップのプロセスは、すべてのデータのフルバックアップを作成することから始まります。このフルバックアップが、以降の増分バックアップの基盤となります。この初回のフルバックアップが完了した後、バックアップソフトウェアはシステムを監視し、選択されている増分バックアップの種類に応じて、ファイルまたはデータブロックの変更を追跡します。

次回のバックアップの実行時には、前回のバックアップ以降に変更または作成されたデータだけがコピーされます。このプロセスはその後の各バックアップ時にも繰り返され、前回のバックアップ以降に生じた変更が増分として取り込まれます。

変更されたデータのみを対象とすることで、増分バックアップではフルバックアップと比べて必要なストレージ容量とバックアップ所要時間が大幅に削減されます。この効率性の高さから、より頻繁なバックアップが可能となり、システムへの影響を最小限に抑えつつ、より優れたデータ保護を実現します。現代的なソリューションでは、変更されたデータを特定するプロセスを効率化するために、変更ブロック追跡(CBT)などの技術がしばしば使用されており、これによりパフォーマンスがさらに向上します。

永久増分バックアップとバージョニングは、ストレージの最適化、バックアップ処理の効率化、データ復旧オプションの改善を通じて、増分バックアップの効率性と柔軟性を大幅に向上させます。こうした要素が組み合わさることで、増分バックアップは、現代のデータ環境に適した、堅牢でリソース効率に優れたソリューションへと変貌を遂げています。

永久増分バックアップ:永久増分バックアップは、定期的なフルバックアップを必要とせずに、継続的にデータを保存していく高度な方法です。この方式では、初回の完全バックアップと継続的な一連の増分バックアップを組み合わせることで、ストレージの必要量とバックアップ所要時間を削減します。バックアップソフトウェアは増分データをインテリジェントに管理し、過去のデータを失うことなく効率性を維持しつつ、増分データを定期的に統合します。 

バージョニング:バージョニングは、増分バックアップシステムの重要な構成要素であり、各時点において複数のデータバージョンへアクセスできるようにするものです。各増分バックアップ時に、その特定の時点のデータの状態を表している新しいバージョンを作成します。バックアップソフトウェアでこれらのバージョンが管理されることにより、バックアップ履歴の任意の時点からデータが復元可能になります。これにより、柔軟かつ粒度の高いデータ復旧が実現できます。

増分バックアップの種類

増分バックアップは、ファイルレベルの増分バックアップとブロックレベルの増分バックアップに大別されます。これらのバックアップ方式は、フルバックアップと比べてストレージの必要量とバックアップ所要時間が大幅に削減されるため、頻繁なデータ保護に理想的です。また、変更されたデータのみを対象とすることで、システムへの影響を最小限に抑えつつ、さまざまなデータ環境に対応できる堅牢な復旧手段を維持できます。これらについて詳しく見ていきましょう。

ファイルレベルの増分バックアップ

ファイルレベルの増分バックアップは、システム内の個々のファイル単位で動作します。この方式では、ファイル全体の変更を追跡し、前回のバックアップ以降に変更されたファイルをバックアップします。この方式が特に有効な環境は、変更の影響を主に受けるのがファイル全体(大きなファイルの一部分ではなく)である環境です。

ファイルレベルの増分バックアップの主な特徴:

  • ファイル単位でのシンプルな復元:この方式では、データセット全体を再構築することなく、特定のファイルを迅速に特定して復元できます。個別のファイルが失われたり破損したりした場合の復旧がシンプルに実行できる方式です。

  • ファイルバージョンの管理が容易:複数の過去のファイル状態へアクセスでき、特定の時点への正確な復元が可能になります。エラーの修正や意図しない変更からの復旧に理想的な方式です。

  • 多数の小さなファイルを扱うシステムでの効率性:変更されたファイルだけをバックアップすることで、バックアップ所要時間とストレージの必要量を削減できます。この方式は特に、小さなファイルの更新が頻繁に行われる環境で効果的です。

ブロックレベルの増分バックアップ

ブロックレベルの増分バックアップは、より高いデータ粒度で動作し、変更された個々のデータブロックを追跡してバックアップします。この方式は、各バックアップの間にわずかに変更される大きなファイルをバックアップしたい場合に、非常に効率的です。ブロックレベルの増分バックアップの主な利点:

  • ストレージ効率:ブロックレベルの増分バックアップの場合、変更されたブロックだけがバックアップされるため、フルバックアップと比べてストレージの必要量が大幅に削減されます。これによりデータの使用領域が最小化されるため、ストレージリソースの枯渇を避けつつ、より頻繁なバックアップが可能になります。また、クラウド環境やオンプレミス環境における大規模なデータセットの管理コストも最適化されます。 

  • バックアップ所要時間の短縮:変更の少ない大容量ファイルの場合、ブロックレベルの増分バックアップは一般的にフルバックアップよりも大幅に高速に完了します。変更されたデータのみを処理・転送すればよいからです。これによりバックアップ処理にかかる時間を大幅に短縮できます。バックアップウィンドウが最小化されるため、システムのダウンタイムやリソースの負荷が軽減されます。この効率性の高さから、より頻繁なバックアップが可能となり、パフォーマンスを損なうことなくデータ保護を強化できます。

  • ネットワークへの影響の軽減:ブロックレベルの増分バックアップでは、変更されたデータブロックだけが転送されるため、バックアップサイクル中のネットワークのトラフィックと輻輳が最小限に抑えられます。これは、ネットワーク帯域幅が限られている環境やバックアップウィンドウに制約がある環境で、特に有益です。データ転送量が減ることでバックアップ処理が高速化し、ネットワークに依存する業務への影響が最小化されます。また、このような効率性の高さから、分散型のシステムやクラウドベースのシステムを利用している場合でも、シームレスな拡張性が実現されます。

増分バックアップの使用

増分バックアップは、データ保護における戦略的なアプローチの一つですが、大きな利点があるのと同時に課題も存在します。効率性やリソース管理は強化されるものの、複雑な手法であるため、導入時には慎重な検討が必要となります。こうした利点と課題のトレードオフについて理解することが、堅牢なデータセキュリティの確保のために増分バックアップを効果的に活用するための鍵となります。

負荷を軽減する効率性:増分バックアップは、変更されたデータだけを取り込むため効率性が高く、フルバックアップよりもストレージ容量が少なくて済み、より短時間で完了します。変更されたデータのみがバックアップサイクル中に転送されるため、ネットワークやシステムリソースの輻輳が軽減されます。このようにプロセスが合理化されているため、頻繁なバックアップが可能になり、システムのパフォーマンスに負担をかけずにデータ保護を強化できます。全体として、増分バックアップは、時間とストレージの両方で大幅な節約を実現しつつ、ネットワークリソースへの影響を最小化します。

ネットワークとリソースへの影響を軽減:増分バックアップは、前回のバックアップ以降に変更されたデータだけを転送することでネットワークの輻輳を大幅に軽減し、ネットワーク経由で送信されるデータ量を最小限に抑えます。そのためネットワーク帯域幅の需要が減少するので、接続に制約がある環境や分散型のシステムを運用している環境で理想的な手法です。増分バックアップでは、変更されたデータのみが対象となるので、システムリソースへの負荷も軽減され、バックアップサイクル中でも他の処理がスムーズに実行可能になります。このような効率性の高さから、管理対象が動的なデータセットの場合でも、シームレスなパフォーマンスと拡張性が実現できます。

ランサムウェア攻撃からの即時復旧:増分バックアップは災害復旧に不可欠であり、障害発生後のシステム復旧に必要な時間、ストレージ、帯域幅を最小化します。増分バックアップは、前回のバックアップ以降の変更だけを取り込むことで、データの復元に要する時間を大幅に短縮し、ランサムウェア攻撃からの即時復旧を可能にします。フルバックアップと比べて必要なストレージ容量が少ないため、頻繁なバックアップが可能となり、迅速なデータ復旧が実現できます。

一連の増分スナップショットを保持することで、システムをランサムウェア攻撃前の状態に素早く戻すことができるため、データ損失を最小限に抑えた復旧が可能です。増分バックアップの高い効率性によって、高速な復元が担保されており、このことはダウンタイムの最小化に不可欠です。この合理化されたプロセスによって、サイバー脅威下でも事業継続性を確保できます。

増分バックアップの複雑な点:増分バックアップには多くの利点がありますが、いくつか複雑な点も存在すると知っておくことが重要です。復元処理の際には、目的のデータ状態を再構築するために複数の増分バックアップにアクセスする必要があるため、単一のフルバックアップから復元する場合よりも時間がかかる可能性があります。また、バックアップチェーン全体が完全なものであるためには、すべての増分バックアップに一貫性があり、利用可能である必要があります。

増分バックアップのベストプラクティス

増分バックアップのベストプラクティスを実践することで、動的なデータセットを管理する場合でも、効率的で信頼性の高いデータ保護が確保されます。これらのベストプラクティスは、変更されたデータのみを対象とすることで、ストレージを最適化し、バックアップ所要時間を短縮し、ネットワークへの影響を最小化します。標準化されたバックアップ手法を採用することで、復旧の信頼性とシステムのパフォーマンスが向上します。主な考慮事項には、スケジュール設定、データ保持ポリシー、データの完全性検証が含まれます。増分バックアップを効果的に活用するために推奨されるベストプラクティス: 

  • バックアップの完全性の定期的検証:バックアップチェーン内のすべてのバックアップが無破損かつ復元可能であることを確認するため、バックアップの完全性を定期的にチェックするプロセスを実施する。これは極めて重要です。なぜなら、増分バックアップは、初回のフルバックアップとその後の増分バックアップの完全性に依存しているためです。

  • ハイブリッド型のバックアップ戦略の活用:増分バックアップと定期的なフルバックアップを組み合わせることで、ストレージの効率性と復旧の簡便性との間のバランスを取る。これにより、複数の増分バックアップからの復元に伴う複雑性を軽減しつつ、ストレージの必要量の削減から得られる利点も享受できます。

  • 効率的なデータ重複排除機能の実装:高度なデータ重複排除機能を備えたバックアップソフトウェアを活用し、ストレージの利用量をさらに最適化し、バックアップ全体のパフォーマンスを向上する。重複排除によってバックアップ間の冗長データが排除され、ストレージ消費量が最小限に抑えられます。

  • 明確なデータ保持ポリシーの策定:増分バックアップを効果的に管理するうえで重要な要素の一つは、データ保持期間を正確に定義することです。これには、増分バックアップを保存するべき期間を指定することや、データを統合または削除する適切な頻度を決定することが含まれます。データ保持ポリシーを明確に定義・導入することで、ストレージ利用量を最適化し、規制上の要件を順守し、復元に必要な関連データの利用可能性を確保できます。

  • 復元プロセスのテスト:増分バックアップの信頼性と有効性を保証するためには、定期的な復元トレーニングの実施が不可欠です。これらのテストでは、実際のデータ損失を想定したシナリオをシミュレートすることで、ITチームが復旧プロセスに習熟し、バックアップデータの完全性を検証できるようになる必要があります。データ復元処理について継続的に練習することで、潜在的な問題を特定・処理できるようになり、実際の災害発生時にスムーズで効率的な復旧が可能になります。

  • バックアップの暗号化:特に、増分バックアップをオフサイト拠点やクラウド環境に保存する場合、増分バックアップの保護は最重要です。堅牢な暗号化対策を実施することで、機密データを不正アクセスから保護し、バックアップされた情報の機密性と完全性を確保できます。業界標準の暗号化アルゴリズムと安全な鍵管理手法を採用することで、データ侵害のリスクを軽減し、重要なデータ資産のプライバシーを維持できます。

  • 監視と調整:増分バックアップ戦略のパフォーマンスと有効性を継続的に監視することは、長期的な成功に不可欠です。主要な指標(バックアップ完了率、データ転送速度、ストレージ消費量など)を定期的に評価し、最適化が可能な領域を特定する。この評価の結果に基づいて、バックアップに関するパラメータ(増分バックアップの頻度やデータ保持期間など)を微調整し、データ保護、ストレージの効率性、復旧目標の間で最適なバランスを取ることができます。プロアクティブなアプローチで監視と調整を実行することで、増分バックアップ戦略の内容をビジネス要件の変化や技術的進歩に見合った形に維持することができます。

これらのベストプラクティスを実践すれば、増分バックアップの利点を最大限に発揮し、データ保護のための強固かつ信頼性の高い枠組みを構築できます。綿密な計画、定期的なテスト、強固なセキュリティ対策、継続的な監視によって、重要なデータ資産を保護し、ダウンタイムを最小限に抑え、災害が発生したとしても迅速な復旧を確保できます。

現代のデータ環境が抱える課題に立ち向かう

データが指数関数的に増加している現代において、効率的で信頼性の高いデータ保護を実現するうえで重要になる戦略が、増分バックアップです。ストレージの最適化、バックアップ処理の高速化、ネットワーク負荷の軽減という利点のおかげで、増分バックアップは、システムのパフォーマンスを損なうことなく、堅牢なデータセキュリティを維持します。増分バックアップは、ハードウェア障害、悪意のある内部関係者、サイバー攻撃、自然災害などによる業務中断から復旧するために不可欠です。定期的な検証、ハイブリッド手法、暗号化といったベストプラクティスを実践すれば、重要なデータ資産の保護を強化できます。増分バックアップを採用することで、現代のデータ環境が抱える課題に立ち向かう準備が整い、業務中断時のレジリエンスと迅速な復旧を保証できます。

近年ますます増えている事業中断のリスクに備えて効率性とレジリエンスを確保するため、増分方式のエンタープライズデータバックアップを導入し、自らの手でデータ保護を管理しましょう。ベストプラクティスを活用すると、ストレージを最適化し、バックアップ所要時間を短縮し、重要なデータ資産を保護できます。将来に備えて組織を安全に保つための、堅牢かつ拡張性のある増分バックアップ戦略の構築を、Rubrikがお手伝いいたします。どうぞ今すぐお問い合わせください。

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