クラウドは急速にさまざまな業界を席巻し、エンタープライズITアーキテクチャの構築方法を根本的に変えつつあります。しかし、デジタルビジネス向けのこの新たなビジョンは、新たなリスクを伴っています。専門家によると、世界のクラウドセキュリティ市場は2023年から2035年まで年間平均成長率(CAGR)が13.86%で拡大し、2035年には1,753億2,000万米ドルに達する見込みです。企業がハイブリッドクラウドやマルチクラウド環境へ移行する中、強固なクラウドIDセキュリティを確保する重要性がこれまで以上に高まっています。

優れたクラウドIDセキュリティは、機密情報へのアクセスを適切な人物やシステムのみに限定し、意図的・非意図的なデータ侵害を削減します。強力な認証を使用し、リアルタイムで監視を続けることで、ビジネスデータを保護し、サイバーセキュリティ規制の順守を維持できます。このアプローチにより、クラウド環境がこの先も進化を続けても、信頼を構築し、堅固なセキュリティを維持できます。

それでは、クラウドIDセキュリティとは何でしょうか? なぜそれが重要なのでしょうか? この記事では、クラウドIDセキュリティの主要要素、ビジネスにおけるベストプラクティス、そしてデータセキュリティポスチャ管理(DSPM)との連携の仕組みを解説します。

eブック
『5 Ways to Stay Cyber Resilient Amidst the Unstructured Data Explosion(非構造化データの爆発的増加の中でサイバーレジリエンスを維持する5つの方法)』

ebook

クラウドIDセキュリティについて理解する


クラウドIDセキュリティとは、クラウド上の人間またはシステムのデジタルアイデンティティを安全に保護するための仕組みです。一連のツールや慣行を用いることで、許可されたユーザーやシステムだけが特定のクラウドリソースにアクセスできるようにします。

従来のアイデンティティ管理はあまり柔軟でなくオンプレミスシステムに重点を置いたものだったのに対し、クラウドIDセキュリティは、複数のプラットフォームにアイデンティティとリソースがまたがって存在する、変化が急速な分散型クラウド環境向けに構築されています。リアルタイム監視と適応型アクセス制御によるセキュリティ維持に加え、自動化されたガバナンスやツール(DSPMなど)を活用し、絶えず変化するクラウド環境におけるコンプライアンス確保とリスク対策を支援します。

クラウドIDセキュリティの中核をなす構成要素:

ユーザー認証:ユーザー認証は、クラウドIDセキュリティの重要な中核要素であり、認証情報(パスワード、生体認証、多要素認証(MFA)など)を通じて身元を検証することで、検証済みの個人やシステムだけがクラウドリソースへアクセスできるようにする仕組みです。これは第一の防御線として機能し、AWS、Azure、Google Cloudなどのプラットフォームへのアクセスを許可する前にユーザーの正当性を確認することで、機密データやアプリケーションを保護します。シングルサインオン(SSO)や適応型MFAなどの堅牢な認証メカニズムを活用することで、クラウド環境全体にわたってユーザー体験を効率化しつつ、不正アクセスのリスクを低減してセキュリティを強化します。

アクセス管理:アクセス管理は、クラウドアプリケーションやデータにアクセスできるユーザーを管理・監視することに重点を置いた仕組みです。適切なアクセス権限の設定、ロールベースアクセス制御(RBAC)の活用、状況の常時追跡を通じて、適切なユーザーだけにアクセスを許可しつつ、セキュリティとコンプライアンスを維持することを目的としています。

RBACによって、業務上必要な特定のユーザーだけにアクセスを限定できます。リアルタイム監視によって、不正アクセスの試みがあった場合はすぐに検知できます。さらに、自動化されたアクセス権限レビューによって、コンプライアンスを維持し、手作業を大量に削減できます。

アイデンティティガバナンス:アイデンティティガバナンスは、明確なポリシーとプロセスを効果的に設定し、システム内のユーザーの身元と権限を管理できるようにする仕組みです。これには、一元化されたユーザー設定・削除、定期的な監査、規制の順守が含まれており、リソースへの安全かつ適切なアクセスを確保します。リスクをより効果的に検知するため、DSPMなどのツールと組み合わせて使用されることもよくあります。 

プロビジョニングやデプロビジョニングなどのタスクを自動化することで、エラーを減らし、アイデンティティ環境をクリーンな状態に保つことができます。定期的な見直しにより、過剰な権限や非アクティブなアカウントを迅速に特定でき、クラウドシステム全体にわたってセキュリティ強化が図れます。

クラウドIDの一元化された管理とデータの保護

クラウドベースのID管理は、認証、アクセス制御、ガバナンスを一元化されたプラットフォームで処理することで、急速に変化する分散型のクラウド環境においても、デジタルアイデンティティの安全性とリソースへのアクセスの安全性を維持します。Rubrikによるクラウド保護は、書き換え不可のバックアップ、MFA、RBACなどのツールを用いて、企業内、クラウド、SaaSの環境全体にわたってIDなどのデータを管理・保護することに重点を置いています。このアプローチにより、アクセスを厳密に制御しながらデータのセキュリティが確保できます。これらのソリューションを組み合わせることで、複雑なクラウドシステムにおいてリスクの低減とコンプライアンスの維持が可能になります。

クラウドIDセキュリティの重要な柱


クラウドIDセキュリティは、今日の複雑なデジタル環境で、人間とマシンの両方のアイデンティティを保護するための重要な基盤です。これには、許可された主体だけが機密リソースへアクセスできるようにするために設計された、さまざまな慣行が含まれます。主要な構成要素には、高度な認証方法や慎重に管理されたアクセス制御などがあり、これらがセキュリティリスクを最小限に抑えます。継続的な監視と監査は、システムのセキュリティとコンプライアンスの維持に大きな役割を果たします。こうした領域に注力することで、進化し続ける脅威からクラウドインフラをより効果的に保護できます。

認証と認可:認証と認可は、適切なユーザーやシステムだけがクラウドリソースにアクセスできるようにするための仕組みです。MFAでは、追加の手順(パスワードに加えて携帯電話に届くコードなど)によって本人確認を行います。指紋認証や顔認証といった生体認証は、個人に固有の身体的特徴を利用することで、セキュリティを一段と高めます。一方、OAuthは、ユーザーが認証情報を提供しなくても、信頼できる第三者プロバイダを通じてアプリケーションに安全にアクセスできるようにします。これらの現代的な手法を組み合わせることで、クラウド環境の堅牢さを維持し、不正アクセスから保護することができます。

最小権限アクセス:最小権限アクセスは、クラウドIDセキュリティにおける重要な原則であり、ユーザーやシステムに業務遂行に必要な権限のみを付与することに重点を置いています。ユーザーのアクセス権を制限することで、偶発的なエラーや悪意のある行動(データ侵害など)により被害を受けるリスクを低減できます。たとえば、ユーザーアカウントが侵害された場合でも、権限が限定されていれば、攻撃者はそのユーザーの役割を超えて機密システムやデータにアクセスすることができません。このアプローチは、動的なクラウド環境における脅威の影響を最小化することで、セキュリティを強化します。

マシンアイデンティティ:サービスアカウントやAPIなどのためのマシンアイデンティティは、自動化システムの伴うクラウド環境が拡大するにつれて急速に増えています。こうした人間以外のアイデンティティは、重要なリソースへのアクセス権が割り当てられていることが多く、攻撃者の標的となりやすいため、保護が不可欠です。人間のアイデンティティとは異なり、マシンアイデンティティは暗号鍵や証明書などに依存しており、これらは侵害防止のために慎重な管理を必要とします。マシンアイデンティティはまだ進化を続けている技術領域であり、これを効果的に保護するためのベストプラクティスについては、多くの未知数な点が存在します。

アクセス制御:アクセス制御は、クラウドIDセキュリティの基盤となる仕組みであり、クラウド環境内の特定のリソースを利用できるユーザーを管理するのに役立ちます。ロールベースアクセス制御(RBAC)は、ユーザーの職務に基づいて権限を割り当て、自分の業務に必要なデータにだけアクセスできるようにします。一方、属性ベースアクセス制御(ABAC)は、ユーザーの特定の属性(所属部門や勤務場所など)に基づいてアクセスを決定するため、状況が複雑な場合でも、より柔軟な対応が可能になります。どちらの方法も、特定のニーズに合わせて権限を調製することで、不正アクセスのリスクの低減に寄与します。RBACとABACを活用することで、動的かつ分散した環境でもクラウドシステムのセキュリティとコンプライアンスを維持できます。

可視性と監査:可視性と監査はクラウドIDセキュリティにおいて極めて重要な要素であり、ユーザーやシステムがリソースへアクセスする方法を継続的に監視・記録することに重点を置いています。アクセスの挙動を注意深く監視することで、脅威の兆候となる異常または不正な活動を迅速に発見できます。定期的なログ記録は、監査のための明確な記録となり、GDPRやHIPAAといった規制を順守し続けるのに役立ちます。こうした継続的な監視によって、クラウド環境のセキュリティと説明可能性が維持されます。

Rubrikが提供するクラウド保護は、MFAとRBACを導入することで、許可されたユーザーやシステムのみが機密性の高いクラウドリソースへアクセスできるようにし、クラウドIDセキュリティを強化します。また、データセキュリティポスチャ管理(DSPM)と連携し、ハイブリッド環境とマルチクラウド環境の全体にわたってID関連のリスクを監視・管理することで、可視性とコンプライアンスを向上させます。

 

クラウドIDセキュリティが重要な理由


クラウドIDセキュリティは、高額な損害を招きかねない重大なリスク(データ侵害、インサイダー脅威、設定ミスなど)から組織を守るために不可欠です。リモートワークとSaaSの普及により、企業を攻撃対象とするサイバー攻撃が拡大しており、堅牢なセキュリティ対策の重要性がこれまで以上に高まっています。MFA、RBAC、DSPMといったツールにより、許可されたユーザーのみが重要リソースにアクセスできるようにします。こうした慣行を優先的に実施することで、HIPAAやGDPRといった規制への順守を維持しつつ、クラウド環境を保護できます。

データ侵害は高い代償を伴う

調査によると、79%の組織が過去2年間でアイデンティティ関連のセキュリティ侵害を経験しています。そうしたインシデントは、認証の脆弱性やアクセス管理の不備に起因することが多く、機密データを危険にさらします。MFAやリアルタイム監視といったツールでアイデンティティ管理を厳格化することで、こうしたリスクを大幅に低減できます。

2024年のデータ侵害による損害金額は平均で488万米ドルに達しており 、そのうち多くを占めるのがアイデンティティ関連のデータ侵害です。認証情報の漏洩による攻撃は、平均で1件あたり481万米ドルの損害をもたらすため、企業にとって多大な負担となります。脆弱なパスワードや不適切なアクセス管理は、こうした高い代償を伴うインシデントを招き、組織のデータを危険にさらします。MFAや定期的な監査などでアイデンティティセキュリティを厳格化することで、そうしたデータ侵害(およびそれがもたらす莫大なコスト)を食い止めることができます。

インサイダー脅威がもたらす打撃は深刻

インサイダー脅威は、意図的なものであれ不注意によるものであれ、当該ユーザーがすでにシステムへのアクセス権を正当に与えられているため、不十分なアイデンティティ管理によって影響が深刻化します。(、悪意のある内部関係者による攻撃の被害が最も大きく、他の種類のデータ侵害よりも高額で、1件あたり平均499万米ドルの損害をもたらします。強力なアクセス制御(ロールベースアクセス制御(RBAC)など)を導入することで、各ユーザーに必要な権限だけを付与できるため、被害の範囲を限定できます。また、定期的な監視や監査によって不審な活動を早期に発見することで、クラウド環境のセキュリティを維持できます。セキュリティに関するベストプラクティスについて従業員を教育することで、インサイダー脅威につながる可能性のあるケアレスミスが発生するリスクをさらに低減できます。

設定ミス:最大の脆弱性

クラウド環境における最大の脆弱性は設定ミスですが、DevOpsチームとセキュリティチームの間の連携の強化が、この問題への対処に役立ちます。クラウドの設定ミスとは、セキュリティ設定が誤っているか、欠落しているか、不適切に構成されている状態を指し、これはクラウドシステムをリスクにさらします。こうした課題があると、問題の発見と修正が困難になります。これはなぜなのでしょうか?

第一に、クラウド環境は、多数の相互接続された構成要素や設定によって複雑になっているため、どの設定ミスが実際に本番環境を危険にさらしているのかが、リアルタイムで可視化されないのです。第二に、DevOpsチームとセキュリティチーム間の連携が不足していると、設定ミスへの効果的な優先順位付けと対応が困難になります。なぜなら、どの問題に最初に対処するべきかや、どう問題を解決するべきかについて、両者で合意できないことがあるためです。

Rubrikのアイデンティティ復元などのソリューションは、包括的リスク分析と時系列データを用いて休眠アカウントやハイリスクな権限付与といった問題を検出することで、Microsoft Active DirectoryやEntra IDにおける設定ミスに対処します。またこのソリューションは、Rubrik Security Cloud内で人間と非人間のアイデンティティを監視し、機密データへのアクセスを特定して侵害を防止し、リスクをプロアクティブに管理します。このソリューションは、復旧ワークフローを自動化し、手作業によるエラーを減らすとともに、直感的なウィザードによって迅速な復元を可能にします。エアギャップ化された書き換え不可なバックアップにより、設定ミスが発生する前の状態に確実に復旧させ、再感染から保護します。統合されたプラットフォームを提供することで、ハイブリッド環境全体にわたってクラウドID管理をシンプル化し、可視性と制御を強化して、設定ミスの予防と対処を効果的に実行できるようにします。

規制順守:常に懸念事項

規制順守やサイバーセキュリティの要件(医療分野のサイバーセキュリティにおける患者データ保護のためのHIPAAなど)がますます厳しくなる中で、堅牢なアイデンティティセキュリティがより一層不可欠となっています。リモートワークとSaaSの普及により、攻撃対象領域が拡大したため、クラウドIDセキュリティの重要性がこれまで以上に高まっています。強力な認証とアクセス制御を導入することで、分散したクラウド環境全体にわたって不正アクセスを軽減し、機密データを保護できます。 

誰が機密情報にアクセスできるかを厳密に制御することを求める規制が存在するため、適切にアイデンティティを保護しない場合、多額の罰金や重大な法的問題に直面する可能性があります。 

そして、こうした罰金や法的影響は広範囲に及びます。2024年、米国保健福祉省民権局(HHS OCR)は、データ侵害に関連するHIPAA違反に対して1,284万米ドルの罰金を科しました。刑事・民事違反には罰金が科されます:

継続的な監視とアイデンティティガバナンスにより、GDPRやCCPAなどの規制順守を確保し、法的・財務的リスクを軽減します。クラウドIDセキュリティをDSPMなどのツールと統合することで、潜在的な脆弱性に対する可視性を高め、脅威へのプロアクティブな検知・対応が可能になります。

アイデンティティセキュリティに注力することで、医療分野のサイバーセキュリティ要件を満たし、クラウドサービス上の患者データを安全に保護できます。

 

マルチクラウド環境におけるクラウドIDセキュリティ


マルチクラウド環境全体にわたってアイデンティティを保護することは、機密データの保護とコンプライアンスの維持を目指す組織にとって極めて重要な最優先事項となっています。多様なクラウドプラットフォームでIDを横断的に管理することは複雑なタスクであり、各アクセス制御の間の一貫性の欠如や不正アクセスのリスクの増大といった、固有の課題をもたらします。

複雑なクラウド環境におけるIDィ管理

マルチクラウド環境(AWS、Azure、Google Cloud)やハイブリッド環境でIDを横断的に管理する作業は複雑です。なぜなら、各プラットフォームがアイデンティティおよびアクセス管理(IAM)のための独自のシステムを備えているため、セキュリティ上のギャップが生まれてしまうのを回避するには慎重な調整が必要となるからです。各クラウドに固有のツール、プロトコル、構成が混在することで一貫性が損なわれ、統一されたセキュリティ体制の維持が難しくなります。 

ハイブリッド環境では、それぞれ異なる認証・認可の方式を備えたオンプレミスのシステムとマルチクラウドのプラットフォームが組み合わさることで、より一層の困難が生じます。こうした多様なシステムの全体にわたってポリシー(RBACなど)の一貫性を確保するには、一元化されたツールと継続的な監視が必要です。こうした複雑さが存在するため、すべてのプラットフォームにわたってアイデンティティ管理を効率的かつ安全に実行するソリューション(アイデンティティフェデレーションやシングルサインオン(SSO))が必要であることは明らかです。

一貫性とコンプライアンスのためにアイデンティティプラットフォームを一元化する重要性

一元化されたアイデンティティプラットフォームは、AWS、Azure、Google Cloudといった複雑なクラウド環境全体にわたって一貫性とコンプライアンスを維持するうえで不可欠です。このプラットフォームは、ユーザーアイデンティティ、権限、アクセス方針を一元的に管理できるハブを提供し、エラーや設定ミスのリスクを低減します。アイデンティティ管理を標準化することで、すべてのプラットフォームが同一のセキュリティルールに従うことを確保でき、GDPRやHIPAAなどの規制の順守が容易になります。このアプローチなら、誰が何にアクセスしているかをシステム全体にわたって明確かつ一元的に把握できるため、監査もシンプル化されます。全体として、運用が効率化され、動的なマルチクラウド環境におけるセキュリティ体制が強化されます。

プラットフォーム横断的なアイデンティティフェデレーションとシングルサインオン(SSO)のベストプラクティス

マルチクラウド環境(AWS、Azure、Google Cloudなど)やハイブリッド環境でIDを横断的に管理することは大変な作業です。なぜなら、各プラットフォームがアイデンティティおよびアクセス管理(IAM)を独自の方法で扱っているため、すべてを安全かつ一貫性のある状態に維持することが難しくなるからです。SAML、OAuth、OpenID Connectといったさまざまなプロトコルを同時に扱いながら、マルチクラウド環境でコンプライアンスを確保し、セキュリティ上の不備を回避しなければなりません。これにハイブリッド型のプラットフォームが加わると複雑さは一層増すため、オンプレミスシステム(Active DirectoryやEntra IDなど)とクラウドベースのアイデンティティツールとの間のギャップを埋める必要があります。これを達成するには、一元化された監督、徹底した監査、柔軟なポリシーが必要であり、そうした多様なシステム全体にわたってすべてを円滑かつ安全に運用することが求められます。では、ベストプラクティスを詳しく見ていきましょう。

  • 信頼できるアイデンティティプロバイダ(IdP)の選定
    クラウドプラットフォーム間の全体の認証を統括する中央ハブとして、Okta、Azure Active Directory、Entra ID、Ping Identityなど、信頼できるIdPを選びましょう。信頼できるIdPは、一貫したセキュリティ基準を確保し、安全なフェデレーションのためにSAML 2.0やOpenID Connectといったプロトコルをサポートします。これにより、認証プロセスを安全かつ標準化したまま、ユーザーアクセスをシンプル化できます。

  • 安全なプロトコルの標準化
    SAML 2.0、OAuth 2.0、OpenID Connectなどの業界標準のプロトコルを使用すれば、アイデンティティフェデレーションを実現し、プラットフォーム間でシームレスかつ安全な認証が可能になります。これらのプロトコルを使用すると、ユーザーはIdPを通じて一度ログインするだけで、個別の認証情報なしで複数のクラウドサービスにアクセスできます。通信するすべてのデータをTLSで暗号化して傍受や中間者攻撃から保護することは、必須です。

  • ユーザー体験向上のためのシングルサインオン(SSO)の有効化
    SSOを設定すると、ユーザーは一度認証するだけで、認証情報を再入力することなく、許可されたすべてのクラウドサービスにアクセスできるようになります。これにより、パスワード疲れを軽減し、脆弱なパスワードが使用されるリスクやパスワードの使い回しが発生するリスクを下げ、ユーザー体験を向上させることができます。SSOを設定する際には、多要素認証(MFA)などの強力な認証方法の適用を求めることで、一層セキュリティを強化できます。

  • ロールベースアクセス制御(RBAC)の導入
    フェデレーションとSSOをRBACと組み合わせると、最小権限の原則に従って、自分の役割に必要なリソースのみへのアクセスをユーザーに付与できます。すべてのクラウドプラットフォームの全体にわたってユーザーの役割の対応付けを一貫して実施しておくことで、権限の不一致を防止し、対応付けの結果を定期的に見直すことで、ユーザーの職務内容との整合を確認します。これは、特にハイブリッド環境やマルチクラウド環境において、不正アクセスの防止に役立ちます。

  • アイデンティティガバナンスの集中管理
    一元化されたアイデンティティプラットフォームを活用すれば、すべてのクラウド環境の全体にわたってユーザープロビジョニング、デプロビジョニング、アクセスポリシーを管理できます。これらのプロセスを自動化することで、退職者のアカウントを有効なまま放置するといった、データ侵害につながるエラーを削減できます。アクセス権限の定期的な監査により、GDPRやHIPAAなどの規制への順守を確保し、アイデンティティ環境をクリーンな状態に維持できます。

  • フェデレーテッドアクセスの監視と監査
    ユーザー行動分析(UBA)などのツールを活用すると、フェデレーションされている各システムの全体にわたってユーザー活動とアクセスパターンを継続的に監視して、異常なログイン場所などの異常が検知できます。すべてのSSOのインタラクションについて詳細なログとセッション記録を有効化すれば、監査やフォレンジック調査が容易になります。このように可視性を高めることで、潜在的な脅威を特定し、サイバーセキュリティ要件の順守を確保できます。

  • フェデレーション環境でのマシンアイデンティティの保護
    クラウド環境では非人間のアイデンティティ(サービスアカウントやAPIなど)も一般的に使用されていますが、これらの保護も忘れることはできません。フェデレーション環境では、マシンアイデンティティに証明書ベースの認証やAPIトークンを使用したうえで、これらの認証情報のローテーションを定期的に実行する必要があります。Rubrikが提供するクラウド保護は、MFAやRBACを統合しており、いずれのプラットフォームでも人間とマシンの両方のアイデンティティを安全に保護できるようにします。

  • 設定の定期的なテストと更新
    フェデレーションとSSOの設定を定期的にテストすることで、設定ミス(これはクラウド環境における主要な脆弱性です)を検出します。新たなセキュリティ脅威やクラウドプラットフォームの変更に対処するため、IdPやSSOの設定を随時更新することで、互換性と保護を確保します。攻撃を想定したペネトレーションテストを計画的に実施することで、アイデンティティセキュリティの枠組みのレジリエンスを検証します。

これらのベストプラクティスに従うことで、複雑なマルチクラウド環境であっても、アクセスを効率化し、セキュリティを強化し、コンプライアンスを維持し、安全な状態を継続できます。ランサムウェア、インサイダー脅威、サイバー攻撃、運用上の障害からアイデンティティサービスを保護するには、Rubrikのハイブリッド型のアイデンティティ復元が役立ちます。複雑さを軽減し、再感染のリスクを最小化し、ハイブリッド型のアイデンティティインフラ全体にわたってクリーンな状態への復旧を実現できます。

クラウドIDセキュリティとデータセキュリティポスチャ管理(DSPM)の統合


クラウドIDセキュリティをデータセキュリティポスチャ管理(DSPM)と統合することは、動的なクラウド環境において組織の機密データを保護する強力な手段です。強固なクラウドID管理と、DSPMが提供するデータの発見・分類機能を組み合わせることで、許可されたユーザーのみが重要リソースにアクセスできることを確保できます。このアプローチにより、可視性が向上し、コンプライアンスが強化され、クラウドインフラ全体にわたって潜在的な脅威に先手を打って対策することが可能になります。

データの機密レベルとアクセスパターンをDSPMで対応付けることによるアイデンティティセキュリティの強化

DSPMは、データを分析し、機密レベルをユーザーのアクセスパターンに対応付けることで、権限のある個人だけが機密情報にアクセスできるようにします。DSPMは、クラウド環境全体にわたって重要データの所在を特定し、機密レベルに応じたアクセス制御を適用します。DSPMをアイデンティティセキュリティと統合することで、誰が何にアクセスしているかをさらに可視化できるため、不正アクセスやデータ侵害の防止に役立ちます。この組み合わせにより、動的な環境、ハイブリッド環境、マルチクラウド環境において、ポリシーを徹底しコンプライアンスを維持する能力が強化されます。

DSPMとアイデンティティセキュリティを連携させる方法

アイデンティティセキュリティは、過剰なアクセス権限や非アクティブなアカウントを検出するうえで非常に重要な役割を果たします。さらに、これをデータセキュリティポスチャ管理(DSPM)と統合することで、各アイデンティティがアクセスできるデータ(特に機密データ)の種類をより可視化できます。これらのプロセスがどのように機能するかを示す例を見ていきましょう。

例:過剰な権限が与えられたユーザーアカウントと非アクティブなサービスアカウント

アイデンティティセキュリティシステムは、ユーザー権限を定期的に監査して職務内容との整合を確認することで、過剰なアクセス権限を検出できます。たとえば、財務部門の従業員がクラウドストレージシステムへの管理者権限を特定のプロジェクト中だけ一時的に付与され、その後は必要がなくなった場合を考えてみましょう。その場合、アイデンティティセキュリティプラットフォームはそのアクセス権限を過剰と警告します。なぜなら、その従業員は、現在の職務上、財務レポートの閲覧は必要だけれどもシステム設定の変更は必要ないからです。さらに、このプラットフォームは、非アクティブなアカウント(たとえば、短期間のクラウド統合のために作成され、直近6か月間は使用されていないもの)も検出し、それが悪用されるリスクを低減します。

DSPMは、これらのアイデンティティがどのデータ(特に、顧客の個人情報や財務記録といった機密データ)にアクセスできるかを対応付けて示します。クラウド環境をスキャンして機密レベル別にデータを分類し、過剰な権限を持つ従業員が、その役割に不要である機密の顧客情報を含んだデータベースにアクセスできることを可視化します。同様に、非アクティブなサービスアカウントが機密のビジネスデータを含んだクラウドバケットに依然としてアクセスできる場合、DSPMはそれも明らかにします。 

アイデンティティセキュリティによるこれらの問題の検出と、DSPMが明らかにする機密データへのアクセス状況を組み合わせることで、不要な権限を迅速に取り消し、休眠アカウントを無効化できます。これにより、GDPRなどの規制への順守を推進し、動的なクラウド環境でもデータを安全に保護できます。

例:医療提供者が患者記録と診断アプリケーションの接続性のためにマシンアイデンティティを使用する場合 

ある医療提供者が、サービスアカウントやAPIキーなどのマシンアイデンティティを使用して、ネットワークを通じて患者記録システムと診断アプリケーションを接続しています。しかし、最初の統合作業を目的として設定されたこれらのアイデンティティの多くは、その後は放置され、古い認証情報が有効なまま保護されていない状態です。ソフトウェアのアップグレード後に放置された古いサービスアカウントが、攻撃者に機密の患者データへのアクセスを許してしまい、高額な損害をもたらすHIPAA違反のリスクが生じています。このデータ侵害は、この医療提供者が厳格なコンプライアンス基準を順守しながら、マシンアイデンティティを管理・追跡する難しさを明らかにしています。

数多く存在するマシンアイデンティティに対する可視性が限られているため、ITチームは重要なシステム統合作業にまだ必要なアイデンティティはどれなのかを判断できないでいます。認証情報を手作業で更新しているためシステム間の同期が遅延しており、エラーのリスクが高まって、患者ケアのワークフローが脅やかされています。そこで、自動化されたマシンアイデンティティ管理を導入することで、この医療提供者は認証情報の監視・ローテーション・廃止を効率的に行えるようになり、コンプライアンスを確保し、アイデンティティを利用した攻撃からの保護を実現できます。

この医療提供者がDSPMを導入すれば、患者記録と診断システムで使用されるサービスアカウントやAPIキーのライフサイクルを自動化することで、複雑なマシンアイデンティティ管理に対処できます。DSPMはこれらのアイデンティティを継続的に監視し、(データ侵害の原因となった古いサービスアカウントのような)期限切れまたは未使用のアカウントについて、攻撃者に悪用される前に警告します。DSPMをActive DirectoryやEntra IDと統合すると、この医療提供者のハイブリッドネットワーク全体にわたる可視性を確保し、アクティブかつシステム統合に必要なアイデンティティを容易に追跡できます。この自動化により、手作業での更新作業が不要となり、エラーを削減できるうえ、機密性の高い患者データをアイデンティティ関連のセキュリティインシデントから保護できるためHIPAAへの順守も確保できます。

また、DSPMを使用すれば、侵害が発生した場合の迅速な復旧も可能になり、ITチームは重要な医療ワークフローを中断させずに侵害されたマシンアイデンティティを復元できます。DSPMの一元化されたプラットフォーム方式は、何百ものアイデンティティの管理をシンプル化し、セキュリティを維持しながらシステム間のシームレスな統合を確保します。またDSPMは、認証情報のローテーションや廃止を自動化することで、将来のデータ侵害を防止し、この医療提供者がアイデンティティ管理に煩わされることなく患者ケアに集中できるようにします。

サイバー対策が容易に

Rubrikのデータセキュリティポスチャ管理(DPSM)の機能は、クラウド、SaaS、オンプレミスの環境全体にわたって機密データを自動的に発見・分類し、重要な情報の所在を正確に把握できるようにします。また、過剰に公開されているデータや設定ミスのあるデータなど、データセキュリティ上のリスクを特定・修正し、データ侵害の可能性を低減します。DPSMをRubrik Security Cloudと統合すると、機密データへのアクセスを監視・管理するためのビューが一元化できるため、GDPRやHIPAAなどの規制への順守が強化されます。これらの機能により、チームは動的なマルチクラウド環境においてもプロアクティブにデータ保護を実行し、サイバー攻撃の影響を最小限に抑える対策を立てることができます。

 

クラウドIDセキュリティ導入のベストプラクティス


クラウドIDセキュリティは、今日の動的なマルチクラウド環境において組織のデジタル資産を保護するために不可欠です。ベストプラクティスを導入することで、許可されたユーザーとシステムだけが機密リソースにアクセスできるようになり、データ侵害などのリスクを低減できます。クラウドIDセキュリティを効果的に強化するための主要なベストプラクティス:

ゼロトラストアプローチの採用:ゼロトラストアプローチの採用は、クラウドIDセキュリティにおける重要な戦略であり、アイデンティティからのすべてのアクセス要求に対して徹底的な検証が実行されます。"信頼せず、常に検証する"という原則は、位置情報やアクセス履歴にかかわらず、すべてのユーザーとシステムに適用されます。ゼロトラストアプローチでは、継続的な認証と検証を要求することで、動的なクラウド環境における不正アクセスのリスクを最小限に抑えます。これは、進化する脅威からデータやリソースを保護するためのプロアクティブな方法です。

継続的な監査と自動化:ユーザー権限を定期的に確認することで、過剰なアクセス権限や非アクティブなアカウントなどの問題を、リスク化する前に発見・修正できます。アカウントのプロビジョニングやデプロビジョニングといったアイデンティティのライフサイクル管理を自動化することで、プロセスが効率化され、人為的なエラーを削減できます。これらの慣行により、最小限の手作業でクラウド環境のセキュリティとコンプライアンスを維持できます。

DevOpsへのセキュリティ統合:継続的インテグレーションおよび継続的デリバリー/デプロイメント(CI/CD )は、現代のソフトウェア開発の中核であり、クラウドネイティブアプリケーションのビルド、テスト、リリースのプロセスを自動化します。クラウドIDセキュリティにおいては、これらのCI/CDパイプラインが、セキュリティ制御を開発ワークフローに直接組み込むうえで極めて重要です。各種のツール(AWS Identity and Access Management(IAM)、Azure Active Directory(AD)、Google Cloud IAMなど)を使用することで、これらのパイプラインは、コードのコミットから本番環境へのデプロイまでのあらゆる段階で、アイデンティティの検証、リソースアクセスの管理、機密データ(APIキーや認証情報など)の安全な取り扱いを実行します。IAMポリシーの検証やロールベースの権限設定といった作業を自動化することで、承認されたユーザーやシステムだけをコードやインフラにアクセス可能にします。これにより、プロセスを遅延させることなく、堅牢かつ規制を順守したセキュリティを維持できます。

DevOpsへのセキュリティ統合とは、CI/CDパイプラインやクラウドネイティブアプリケーションにIDセキュリティ対策を組み込むことを意味します。また、MFAやRBACといったツールを開発ワークフローに組み込むことで、セキュリティを最初からプロセスの一部とすることができます。このアプローチにより、潜在的な脆弱性を早期に発見し、クラウド環境でのリスクが低減可能になります。さらに、パイプライン内でのアイデンティティチェックを自動化して設定ミスを防ぐなど、DevOpsチームの作業を遅らせることなくアプリケーションのセキュリティを維持できます。

クラウドネイティブなツールやサードパーティのツールの活用クラウドネイティブなツールやサードパーティのツールを活用することは、クラウドIDセキュリティを強化するための賢明な方法です。信頼できる外部のアイデンティティツール(Okta、Entra ID、Azure Active Directoryなど)は、認証やシングルサインオン(SSO)のための堅牢な機能を提供し、各プラットフォームの全体にわたってアクセスを安全に保護します。AWS IAMやGoogle CloudのIdentity Platformといった、クラウドネイティブなセキュリティツールは、各自の環境に特化して組み込まれた機能を備えており、シームレスな統合を実現します。これらのツールを組み合わせて使用することで、動的なマルチクラウド環境において一貫したセキュリティとコンプライアンスを維持できます。

Rubrikのハイブリッド型のアイデンティティ復元ソリューションは、Microsoft Active DirectoryおよびEntra IDの各環境の迅速な復旧により事業継続性を維持し、ランサムウェア、インサイダー脅威、サイバー攻撃、運用上の障害からアイデンティティサービスを保護します。Rubrikのアイデンティティ復元ソリューションなら、複雑さを軽減し、再感染のリスクを最小化し、ハイブリッド型のアイデンティティインフラ全体にわたってクリーンな状態への復旧を実現できます。

これらのベストプラクティスを順守することで、クラウドIDセキュリティの体制を大幅に強化し、ますます複雑化するクラウド環境においてデジタル資産をより確実に保護することが可能になります。

さらに詳しく


クラウドIDセキュリティは、今日の動的なマルチクラウド環境における複雑さを管理できるようにすることで、組織を守るための重要な盾の役割を果たします。強固な認証、アクセス制御、アイデンティティガバナンスといった主要な柱に注力することで、アクセスを安全に保ち、機密データを保護できます。Rubrik Security Cloudのようなツールは、MFA、RBAC、DSPM統合といった機能を備え、リスクへの対応とコンプライアンスの確保を容易にします。これらの戦略を採用することで、クラウドシステムのセキュリティとコンプライアンスを維持し、絶えず進化するデジタル時代の課題に備えることができます。

クラウドIDセキュリティを強化し、高い代償をもたらす侵害からデータを保護する準備はできていますか? 今すぐお問い合わせいただき、MFA、RBAC、DSPMを備えたRubrik Security Cloudソリューションが、マルチクラウド環境をどのように保護できるかをご確認ください。組織のセキュリティとコンプライアンスを確保する取り組みを、今すぐ始めましょう。

よくある質問